第4回世界水フォーラム閣僚会議における
橋本龍太郎諮問委員会議長スピーチ


国連「水と衛生に関する諮問委員会」の議長として、本日のこの閣僚会議にお招きいただき、ありがとうございます。そして、私がこの第4回世界水フォーラムの初日の場で発表した、諮問委員会行動計画について話をする機会を得たことを大変うれしく思います。

皆様のお手元にある行動計画「ユア・アクション、アワ・アクション」は、資金調達、水事業パートナーシップ、衛生、モニタリング、統合的水資源管理、そして水と災害の6つの分野に関し、世界が直面している問題に突破口を切り開くための、私たちの行動計画です。ユア・アクションは国際目標達成を阻む障壁や障害を取り除くために、各国政府を含む鍵となる行動主体が取るべき行動を、時には名指しで指し示しています。アワ・アクションは委員会が全体で、あるいはそれぞれの委員が、そうした行動が実現するよう、鍵となる行動主体と共同で取っていくべき行動を示しています。

諮問委員会は、今すぐに注意を向けなければならない事柄として、全体に関る2つの重点項目に注目しています。ひとつは水サービスにおける資金調達のための枠組みの見直しであり、そしてもうひとつは、水と衛生分野の問題解決において突破口となる能力育成です。

まず、資金の問題について明確にしなければならないことがあります。第一に、資金調達に対して各国政府は大きな責任を担っているということです。水供給と衛生に対するニーズを満たしていない国の政府は、特に地方の水道事業者の資金調達が可能となるような環境を醸成することによって、その責任を果たさなければなりません。第二に、資金や技術の支援機関、援助機関、NGO、国連といった国際社会は、より包括的、継続的に、こうした改善を支援し、インセンティブを与えていかなければなりません。

水サービスは地方の組織によって供給されます。そして、そこへの資金調達が鍵となります。これこそが、私が今日、みなさんにお話ししたいことです。世界は、この分野での新しい考えに対する皆さんの支援を求めています。

水のインフラと衛生サービス施設が、ただでは提供されない以上、政府は必要なシステムの構築と維持を保証する、適切な財政の仕組みを構築しなければなりません。そのためには、適切な料金体系と補助金の組合せが必要です。特に貧困層が収入の大半を費やしたり、裕福な個人や機関が公正な負担分を支払わないということがないよう、政府や水事業体は、公平な、しっかりとした料金体系を確立する必要があります。

その上で資金調達を考えると、ここでの大きな問題は、入手可能な資金がどこにも無いということではありません。世界に潤沢に流れている資金が、水と衛生セクターにどうして流入してこないのか、それを追求することが大事です。委員会は度重なる議論の結果、サービスの向上と資金調達スキームの拡大が車の両輪として働く必要があるとの結論に達しました。

各国の政府が思い切った改善を遂げられるよう、国際金融機関、OECDのDAC諸国を含む援助機関、地域機関による、三つの行動の実施を提案します。第1は、水サービスにおいて、ガバナンスと透明性をより向上させるための持続可能なプログラムの作成と実施、第2には、地方の水事業体が新たな資金源を知り、また投資機関が逆に投資先としての水事業体を知るためのプログラムの作成と実施です。第3はこの分野における能力開発のための援助機関による水資金の投資です。

行動計画の資金調達に関する章の中で、私たちはこれから申し上げるような、極めて具体的な行動を呼びかけています。どうぞ、このドキュメントに注目いただくようお願いします。

まず、私たちは、国際および地域金融機関に対し、水分野への資金調達を引き出す各国の能力を向上させるために、何が出来るか自ら評価することを求めます。このことは、各金融機関がそれぞれの理事会でこの問題を議論することを含んでいます。

私たちは世界自治体連合やその他の組織を含む、市長や自治体の連合体と連携し、地方の水道事業体が地方の年金基金やその他の資本の投資を引き出す能力の向上を目的として、知事、市長、水道事業体の長を対象とした一連のサブ地域単位のワークショップや技術協力が実施されるように求めます。

私たちは、地域開発銀行がこうした問題に関する技術協力を実施するように求めます。これには、地方水道事業体が共同して融資のための格付けを受けるのに必要な協力を含みます。

私たちは国連が、駐在代表を通じ、関係する地域の資金技術協力機関の支援を得て、水事業体の管理能力を向上するための持続可能な能力育成プログラムを構築するよう求めます。

私たちは、国連事務局に対し、低コスト労働集約型アプローチが、特に水供給と下水道事業への適用性を持っているかどうかを助言するために、世界食料計画などの機関と相談することを求めます。

私たちは、金融の専門家に対し、自治体が低率で融資を受けられるよう、地方の開発機関とプール融資制度に関する情報とデータを提供するよう求めます。

私たちは、国際金融機関と地域開発銀行に対し、こうした点について、関係する地域の国連事務所と協力して、地域又はサブ地域ベースで議論するために、2006年及び2007年に、計画・財務担当及び水担当大臣と特別な会議を開催することを求めます。その際、能力開発の状況評価を併せて行うことを求めます。

私たちは国際金融公社に、為替リスクの保障を含めた部分的保障の経験に関する、水事業体への資金提供者間のワークショップを、開催することを求めます。

私たちは、皆さんの支援とこのプログラムに対する支持を必要としています。これらのプログラムは多くの場合、既にある優良事例をもとに始められます。今までに述べた、鍵となる組織に対して、理事や幹部職員を派遣している政府は、これらの計画が成功するよう奨励しなければなりません。

諮問委員会はこの提案の実現に向け、国際金融機関、地域開発銀行、OECDや援助機関とのハイレベルな対話を開始します。そして、各国政府や地域政府機関と対話を重ね、地方の水道事業体、そしてもっとも重要なことですが、草の根レベルで水を待つ人々が、この提案の恩恵を直接享受できるように努めていきます。

資金調達のアプローチを変えるだけでなく、私たちには車のもう一つの車輪である能力育成を図っていかなければなりません。

公共の水サービスは、現在、世界の水供給の90%以上を担っています。公共水事業が少しでも改善されれば、世界の水供給サービスに、大きな影響を与えるでしょう。諮問委員会は、この公共水事業体の改善のため、うまく行っている水事業体が、うまく行っていない事業体の改善を非営利で支援する、いわば助け合いの考え方に基づく新たな仕組みを提案しました。私たちは、この水事業体同士の協力を体系立てて行う仕組みを、水事業体パートナーシップと呼んでいます。

衛生では、私たちは地域機関、特に地域開発銀行に、保健の専門家や科学者を含めた利害関係者やウォッシュやエコサンといった既存のイニシアチブが参加する、地域の技術、資金調達、コミュニティ組織に関する衛生ワークショップの開催について持続可能なプログラムを構築することを求めます。意識の高揚とフォローアップ活動は、世界レベルでの水と衛生に関する活動前進の鍵となります。私たちは国連命の水の10年という機会を有効に活用していかなければなりません。

私たちは、2008年を「国際衛生年」とすることを提案します。また、衛生への関心を高め、意識を高揚する新たな手段を提案します。どうぞ、諮問委員会行動計画の衛生に関する章をお読みください。

今まで地方の資金調達に課題を絞ってお話をしましたが、それ以外の諮問委員会行動計画の課題であるモニタリング、統合水資源管理、水と災害についても少し触れておきたいと思います。

モニタリングについては、国際目標のお守り役である国連が、進捗状況の計測に必要な、信頼できるデータを提供することに責任を持たなければなりません。国連事務総長、既存の国連機関の幹部、国連水関連機関調整委員会、OECDとその加盟国は、この問題での重要な役目を担っています。諮問委員会は、国際社会や金融機関と協力して、提案された改善や活動の強化を実現するために、国連やその他の機関を支援します。

統合水資源管理に関して、私たちは、統合水資源管理と水効率化計画の進捗に関する報告を必要としています。委員会は、国連事務総長に、各国が計画の作成と実施に関する報告を提出し、2008年に開催される持続可能な開発委員会第16回会合で議論するように、各国首脳に書簡を送ることを求めます。報告された計画は、世界中で共有されるために、国連によって構築されたデータベースに登録されます。

多くの水災害は予知可能です。地球規模で水災害の軽減に取り組むためには、国際社会が、地球規模の意識高揚を図り、約束を創る、水災害に対するわかりやすい一つの共通の目標を持つことが極めて大事だと考えています。委員会はそうした方向への努力を支持し、国際社会がそうした共通の目標を設定したならば、その実現に向けて関係者と協力して努力していきます。

最後に利害関係者の参加について、現場で女性、貧しい人、先住民、若者、子供、市民などの利害関係者や医療関係者など他の分野の人々と水関係者が関わり、対話をすることが、毎日のありふれた光景になるよう、全世界に提唱します。そして、皆さんの国々でそれが現実のものとなるよう、政府の協力を求めます。

私たち諮問委員会は行動をおこします。そして皆さんが行動をおこすよう要請します。行動こそが世界を21世紀の水危機から救うのです。

ありがとうございました。