国連「水と衛生に関する諮問委員会」第5回会合
2006年3月14日
議長開会ご挨拶


国連「水と衛生に関する諮問委員会」
議長 橋本 龍太郎


 

この度、ここに国連「水と衛生に関する諮問委員会」第5回会合が開催されるにあたり、委員の皆様にご参集頂きましたことに対し、本諮問委員会の議長として、先ず心から御礼申し上げます。そして、この第5回会合の開催に際して、多大なるご支援を頂きました日本政府に心より御礼申し上げます。

さて、先月20日及び21日に、ベルリンにおいて、国連「水と衛生に関する諮問委員会」第4回会合が開催され、ウッシー・アイト副議長をはじめ14人の委員のご出席のもと、熱意ある議論が展開されました。

前回の会合では、まず、第3回会合のフォローアップとして、「公々連携」、「資金調達」、「衛生」の3つのテーマにおいて、「実行可能な提言項目」をまとめるために集中的な議論を行いました。

「公々連携(WOP)」は、従来、官官協力(PUP)と呼んでいたものであり、公益事業者の能力開発を支援することを目指したシステムです。この新たなシステムを「公々連携(WOP)」と呼ぶことについて合意がなされました。もちろん、これは、企業、NGOなど非営利で公的水道事業に貢献している団体等を排除するものではありません。

資金調達は、国際的に承認された水と衛生に関する目標を達成する上で、主要な課題の1つです。諮問委員会の取るべき行動の対象分野として、3つの主要な分野が明確にされました。つまり、「国家政策策定のレベル」、「金融・資金提供者グループ」、「水と衛生サービスの提供を中央から地方自治体レベルへ移譲させることに関与している人々」、です。

「衛生」分野は、ミレニアム開発目標やヨハネスブルグ実行計画目標の達成において、特に遅れている分野であります。この衛生に関する目標の達成に向けて、政治レベルでの関心を高め、焦点を絞った行動を取るとの点で合意がなされました。 。

そして、「水と災害」、「モニタリング」、「統合水資源管理」という新たな3つのテーマについて議論を行いました。

「モニタリング」に関しては、ユニセフ及び世界保健機構によるジョイント・モニタリング・プログラムなど、世界的なモニタリングの推進を目指しているいくつか個別の計画に関して議論を行いました。これらの計画を一堂に集め、総合的な研究を行い、方法論を改善できるような場を提供するよう、国連水関連機関調整委員会(UN−Water)に要請しました。何人かの委員からは、モニタリングに対して国家レベルで十分な予算が配分されていないとの懸念が表明されました。

また、「統合水資源管理」に関しては、実行可能な提言事項として実質的な管理の統合や、ステークホルダー間の連携について議論を行いました。意思決定の過程において、ステークホルダー間の効果的な協力を推進すべきであるとの点で委員の意見が一致しました。一部の委員からは、資金提供者と流域団体との対話が重要であるとの意見も出されました。

「水と災害」については、討議に先立ち、米国陸軍工兵隊ストロック長官に「米国における水資源管理:ハリケーン・カトリーナへの対応と教訓」と題した発表をして頂きました。この発表は、ハリケーン・カトリーナによる災害と陸軍工兵隊によって確立されたハリケーン対策とその過程を余すことなく伝えるものとして、高い評価がなされました。
そして、「水と災害」の問題は、諮問委員会の柱の1つとするべきであるという点で、委員の意見が一致しました。また、「水関連災害による死者を半減させる」という目標の基本理念の説明がなされ、何人かの委員からは、水災害による死傷者の数を削減するために新たな国際的数値目標をつくるべきであるという意見に賛意が表明されました。一方で、この委員会で新たな数値目標を作ることに対し慎重な意見を表明する委員もいました。

これらテーマ毎の作業部会において成果報告書を作成し、それぞれの「実行可能な提言項目」を今回の会合までに他の諮問委員にも伝えて下さるようお願いしました。

本日の会合においては、前回議論を行ったテーマ「水と災害」、「モニタリング」、「統合水資源管理」に関して、「実行可能な提言項目」を更に議論を深め、プロポーザルとして取りまとめていきたいと思います。まとめられた「実行可能な提言項目」は、第4回世界水フォーラムの初日に予定されている私の基調講演の中で、諮問委員会の成果として発表させて頂くこととしております。また、明日は、今後の活動について議論を頂き、具体的な活動の方向性について取りまとめていきたいと思います。

諮問委員会として、具体的な行動につながる成果を出すために、今日から始まる2日間で、集中的かつ深い議論を行って頂き、そして、我々が取るべき行動の方向性を見極めていきたいと考えております。
 よろしく御討議の程お願い申し上げます。