8月7日(日)
「先住民と天然資源管理・農村開発とよりよい環境を目指して」
寄稿文

GLOBEJapan(地球環境国際議員連盟)・IFAD(国際農業開発基金)・
東京大学大学院農学生命研究科共同開催(愛知万博内・国連館にて)

水は人類の源であるということは今更申し上げることもありません。エジプトはナイルの賜物、アジアに生まれた中国、インド、メソポタミアの文明もいずれも水が生んだものでした。そもそも我々人間は母の胎内で水に浮かび、生命は海から陸に上がり、なればこそ水の機嫌を損ねれば文明は滅びる。灌漑に栄え、灌漑がもたらした塩害に滅んだシュメールの事例は良く知られている事だと思います。

挨拶をする橋本   シンポジュウム風景
挨拶をする橋本   シンポジュウム風景

一昔前の我が国日本では水というものが大変豊富であると思われていたのでしょう。それは我々の日常会話の中に今も残っています。例えば「全ては水に流す」「湯水のごとく使う」しかし、そのような贅沢な使い方が許される状況ではない事は我々自身が一番知っています。今や貧困・公害・気候変動・災害等、水に関する問題は各国の抱える最大の案件の一つになっています。またこのような案件は途上国になればなるほど深刻さを増していきます。1950年代〜60年代にかけて我々日本が経験した多くの失敗と同じパターンのものもあります。各国が過去に犯した失敗、その失敗から学んだ知見を隠すのではなく、途上国の方々と共有し、集積していく事が、世界各国で同じような過ちを繰り返さない為にも非常に重要な事であると考えます。

その中で、農業と水は切っても切り離せない関係にあることは自明の理であります。水力発電・上下水道・灌漑そして排水設備の整備といった水資源管理は途上国における農業の効率性や食糧生産を向上させ、貧困消滅を促進する上で非常に有益であります。世界中で灌漑された土地は農地の約17%にあたり、そしてその17%の地域が、食料の40%を生産しています。現在の世界人口を鑑みますと今後20数年の間に17%を50%に引き上げる事に失敗すれば、世界は深刻な食料量不足に直面する可能性があると言われています。水の効率的な利用は農業や食料増産の為にも求められています。

昼食を取りながら打ち合わせをする   シンポジュウム出席者と
昼食を取りながら打ち合わせをする   シンポジュウム出席者と

地球環境国会議員連盟(GLOBE/Japan) は国際農業開発基金(IFAD)と協力しながら、世界の相互に絡み合う貧困削減と環境保全の問題を取り上げてきています。千年紀開発目標(MDGs) は2015年までに貧困民を半減させ、環境面での持続可能性を向上させることを謳っています。貧困削減と環境管理を進めていく上で、農村振興は益々重要な政策課題となっています。

持続可能な開発という目標に適う生活を維持していくために環境や天然資源を管理しなければならないのは他でもない私たち人類が果たすべき使命です。そのためには、天然資源の管理や自立的な生活を目指す人々や、地域社会、組織の自立を助けることが重要です。

我々立法者の役割は、農村振興、貧困削減、環境保全といった関連する政策課題を明らかにし、適切な政策立案と効果的実施の推進を図り、国民や組織を含めた幅広い関係者の人たちとの協力関係を構築していくことだと考えています。原住民の人たちはそうした関係者の重要な一部を成しています。私たちは持続可能な開発を進めるべく、世界的な協力関係を強化していかねばなりません。それは、私たちが与えられた選択ではなく、果たさなければならない使命なのです。