国連防災世界会議スピーチ


 国連「水と衛生に関する諮問委員会」議長、日本水フォーラム会長として、この発言の機会を得ましたことは、大変光栄であり、また喜びとするところであります。

 今から丁度一ヶ月前、「日本水フォーラム設立大会」の開催に合わせて、「統合水資源管理に関する国際会議」と「国連水と衛生に関する諮問委員会第2回会合」が東京で開催されました。「統合水資源管理に関する国際会議」には、世界48ヶ国から、水に関する多様な専門家を中心に217人が集まり、議論・検討した結果、数々の有益な成果が産み出されました。その一つが、「統合水資源管理に関する国際会議」の「危機管理分科会」から「国連水と衛生に関する諮問委員会」に提出された「水災害に関する緊急アピール」であります。本アピールは「水に関する災害による死者数を2015年までに半減する」という目標を国連ミレニアム開発目標に加えようというものであります。諮問委員会も、このアピールの基本的精神を強く支持しました。
 国連ミレニアム開発目標には、水と衛生に関して、水不足と水環境をめぐる二つの目標、「安全な水にアクセス出来ない人の割合を半減すること」と「改善された衛生設備を使えない人の割合を半減すること」が掲げられています。しかし残念ながら、水が多すぎる問題、すなわち洪水や津波等の水災害の防止に関しては、何らの目標も定められておりません。

 水災害が如何に開発途上国の発展を妨げているか、火を見るよりも明らかです。今回の大津波災害はその端的な一例に過ぎません。また、たとえば、地球温暖化に伴い海面が上昇すれば、このような危険性は益々増大します。
 何も我々が今回の大津波を予見していたわけではありません。しかし、今回の災害は水に関わる災害の特性をそのままに示しております。水に起因する災害は、予見可能な場合が大部分です。大雨が降って洪水が起こり、地震があって津波が起こります。地震や火山噴火のように予見し難いものではありません。有効な予報警報システムがあれば、少なくとも多くの人命損傷は防げるのであります。そのことを強く訴えたものでありました。
 日本では、洪水予警報システムの普及と共に、水災害の死者数は激減して来ました。それでも昨年は、いたましいことに風水害で230名を超える死者・行方不明者を出してしまいました。災害による死者をなくすることは決して簡単なことではありません。しかし、インフラ等の施設災害を防ぐために、莫大な投資と長い時間が必要であるのに対し、人命被害は予警報システムの導入と、人々の意識喚起をすることによって劇的に減らせます。

 「水災害に関する緊急アピール」がこの会議でも活かされ、充分に検討、議論されて今後に活用されることを心から願ってやみません。
 ご静聴、有難うございました。