国連「水と衛生に関する諮問委員会」第二回会合

2004年12月9日

国連「水と衛生に関する諮問委員会」
議長 橋本 龍太郎 
  この度、ここに「国連水と衛生に関する諮問委員会」第二回会合が開催されるにあたり、再び委員の皆様にご参集頂きましたことに対し、本諮問委員会の議長として先ず心から御礼申し上げます。
 

去る七月二十一日及び二十二日にニューヨークの国連本部において、「国連水と衛生に関する諮問委員会」第一回会合が開催され、十四人の委員のご出席のもと、熱意ある議論が展開されました。そこでは、国連の水に関するミレニアム開発目標達成のために取り組むべき、十の優先課題を確認致しました。そして、本委員会は、独立した機関として存在し、単に報告書を作成するのではなく、具体的な行動と発言を示し続けていくことを通じて、水と衛生に関する啓発を行っていくことに合意しました。また、そのための活動の柱として、三つの作業部会を開催し、事務総長への戦略的アドバイスを作成すること、元首をはじめ市長や労働組合の人などの幅広い人と会い、現場の声を最高意思決定者に伝えること、そして、二00五年四月の持続可能な開発委員会第十三会期や、九月の国連ミレニアム宣言レビュー会合において、本委員会から提言を行うことが挙げられました。

今年は、世界各地で多くの災害、特に水による甚大な被害が発生した年でした。これまで水災害に対して先進的に取り組んできた国においても多くの犠牲が発生したことから、改めて水災害は完全になくすことのできないものであることを再認識させられました。また、災害に対して脆弱な地域とわかっていながらもそこでの生活を余儀なくされている貧しい人達が最も被害を受けやすく、水災害による致命的な被害を受けること、更にはこのために新たな貧困が発生するという悪循環に陥っています。こうした災害によって基本的な水関連インフラ施設が破壊されることは、ミレニアム開発目標達成を阻む大きな要因となります。気候変動や人口増加による水災害のリスクの拡大を念頭に置き、今一度、我々は委員会として何をすべきか、何ができるかを考えなければなりません。

十二月六日から昨日までの三日間にわたり、私が会長を務めております日本水フォーラム主催のもと、「統合水資源管理に関する国際会議」が開催されました。本会議開催の目的は、社会・経済活動を発展させつつ、より豊かな自然環境を育むためには、貴重な水資源を有効に開発、保全、管理していくことが重要だという共通認識を確認することであり、その上で、二00二年にヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する首脳会議でなされた「二00五年までに各国は統合水資源管理及び水効率化計画を策定する」という約束が確実に果たされるよう、促すことにありました。本会議では、各国及び各地域で取り組まれている統合水資源管理の手法や、具体的な行動が発表され、それをもとに展開された議論の結果を提言としてまとめました。


水問題はそれぞれの国、地域で異なるものです。現在それぞれの国で行われている水資源管理は、その国の抱える水問題や社会的、経済的発展を反映しています。そのため、「よりよい水資源管理」と一言で言っても、それは万国共通のものではあり得ません。重要なのは、各国それぞれが自らの水資源管理を見なおし、解決に向けて優先的に取り組むべき課題を確認し、共通認識を持つことです。

ここで忘れてはならないのは、それぞれの国が自国の都合だけで水資源管理を考えるのでは上手くいかないということです。世界には多くの国が国境を越えて水源を共有していることから、越境水問題についても充分考慮する必要があります。

それぞれが主体性を持ちつつ、そして全てのステークホルダーが参画するよりよい水資源管理とは何か、ということを問い続けながら、その方向性を見極めることが肝心です。そして、それらをもとにして、具体的な行動に結びつけていくことこそが最も大切なことなのです。

本諮問委員会も二回目を数え、我々の具体的な行動計画を策定することが望まれます。第一回会合のあと、私から委員のみなさんに本諮問委員会として具体的にどのような行動を起こすべきか、ご意見を聞かせて頂きたいとお願いして参りました。みなさんから頂いた有益なご意見を今回の委員会での議論の土台としたいと思います。今日から始まる二日間で、各作業部会においてそれぞれのテーマを集中的かつ深い議論を行って頂き、我々が取るべき行動の方向性を見極めていきたいと考えております。

よろしく御討議の程お願い申し上げます。