第3回世界水フォーラム閉会式
第3回世界水フォーラム運営委員会 会長
橋本 龍太郎  ご挨拶
閉会式にて

ここに、皇太子殿下、同妃殿下の御臨席を賜り、8日間に及んだ第3回世界水フォーラムの閉会式を無事挙行できますことは、主催者としてこの上ない喜びであり、大きな感激を覚えております。

また、182の国・地域から、2万4千人を越える参加者の皆様、特に、このような国際情勢の中にも関わらず海外からおいで頂いた6千人を超える参加者の皆様、8日間に及ぶ熱い議論と水問題解決に向けた情熱溢れる行動に対し、心から感謝申し上げます。

現在までに提出された33の主要テーマと5つの「地域の日」のステートメントこそ、このフォーラムの輝かしい成果であり、私たちの今後の『行動』の行く手を煌々と照らしてくれていることを皆様と共に喜びたいと思います。
21日、第3回世界水フォーラムの組織委員会を開催し、38のステートメントおよびこれまでの皆様の議論を踏まえ「暫定フォーラム声明文」を取りまとめました。この暫定声明文は、第3回世界水フォーラム組織委員会として取りまとめたものであり、今後、ヴァーチャルフォーラムあるいはホームページ上に掲載し、フォーラム参加者の意見を踏まえて更に良いものにしていきたいと考えております。

今回の水フォーラムを通じ、途上国が抱えている水問題の多くは、かっての日本が40年、50年前に経験したもの、これは先進国に共通のことかと存じますが、我々はその失敗や失敗から学んだことを伝えることが出来ず、世界各地で同じような過ちが今もなお繰り返されていることを改めて再認識させられ、そして、これらの失敗、過ち、あるいは偶々上手くいった事例を含めた知見の集積、共有化が先ず必要であることに気が付きました。昨日、情報の共有化を進めるための第一歩である「経験交流パートナーシップ」が関係者の間で合意されたことは嬉しいことでした。この水フォーラムを契機に生まれる新しいパートナーシップに皆さんが積極的にご参加いただけるよう、切に願っております。

『行動』を旗印に開催されたこの8日間の議論に参加し、命の源である水を将来の世代に間違いなく引き継ぐためには、水に関する基本理念を人類で共有することが重要と考えるようになりました。
水は自然の水循環の過程で、地球上の全ての命を養っています。そんな中、我々人類だけがその自然の水循環を大幅に変えられるようになり、先進国では潤沢に、場合によっては潤沢すぎるほどに水が使われています。しかし一方発展途上国などでは自然の水循環に水を汚すこと以外には手を加えることが出来ず、深刻な水不足、水汚染に苦しんでいます。この地球は水をめぐって両極端に引き裂かれたかのように見えます。
人類は自然の水循環に手を加えざるを得ないのでしょう。劣悪な水環境によって8秒に一人、子供の命が奪われているという現状を決して見過ごすことは出来ません。しかし一方自然の水循環を必要以上に変え過ぎても水環境に重大な影響を与えてしまいます。水にいかに我々人類が接するべきか、その基本理念の確立こそが急務であると強く感じました。

このフォーラムにご参加いただいた皆様が、この期間中に得られたものをそれぞれの持ち場に持ち帰り、現地に活かされること、そしてそこから水問題の基本的な単位である流域をベースに新しい具体的な行動が生まれてくることを強く願っております。私自身、第3回世界水フォーラムの主催者として、この日本において先頭に立ち、世界の人達と手を携えて頑張っていきたいと決意を新たにしております。

そして、イラクをめぐる緊迫した国際情勢についてですが、第3回世界水フォーラムとして、安全が確保された段階において直ちに専門家を派遣し、安全で衛生的な水が速やかに確保されるよう、この水フォーラムに結集された専門知識やノウハウを提供していきたいと考えています。

最後に、第3回世界水フォーラムの開催にあたり、会場内や駅などで活躍していただいた700名を越えるボランティアの皆様、京都・滋賀・大阪の地元自治体や政府機関の職員の皆様、会議での議論を支えてくださった178名の通訳者の皆様をはじめとするフォーラム関係者の皆様、そして、何よりも国内外から集まってくださった参加者の皆様に、心から御礼を申し上げ、閉会の挨拶といたします。