確定拠出型年金制度の具体的な仕組みの検討の方向 

橋本前内閣総理大臣が会長を務める確定拠出型年金導入推進議員連盟の意見交換会が去る6月8日にキャピタル東急ホテルにて行なわれ、確定拠出型年金制度の具体的な仕組みについて話し合いがされた。


1.具体的な仕組み
 
(1) 制度への加入・拠出
 
イ.企業が拠出する場合の企業の従業員
 
(加入)
 
企業は、労使合意に基づいて制度の内容を規定した確定拠出型年金規約を定め、主務大臣の承認を受ける。
   
確定拠出型年金規約を定める企業の従業員は、すべて制度の加入者となる。
   

(拠出)
 
企業は、確定拠出型年金規約に基づき、掛金を拠出する。
   
従業員も、企業の拠出に加え、自ら拠出することができる。この場合、掛金額は従業員が任意に決定する。
   
拠出には限度額を設ける。
   
企業は、従業員の掛金について従業員の給与から天引きし、企業の掛金とともに、予め選定した資産管理機関(拠出された資産を企業財産から分離して保全する等のための機関として制度上位置付けるもの)に払い込む。
   
資産残高は、個人ごとに記録管理される。この記録管理は運営管理機関(記録管理のほか、個別の運用商品の提示や投資教育等を行うための機関として制度上位置付けるもの)が行う。
   
加入者が離転職した場合には、離転職先の制度に加入者の年金資産を移管する。
   


ロ.企業が拠出しない場合の企業の従業員、自営業者等
 
(加入)
 
企業が拠出しない場合の企業の従業員、自営業者等の、加入の申込みの受付け、掛金のとれまとめ等を行うための機関として、指定団体を制度上位置付ける(指定団体は国民年金基金連合会とする)。
   
指定団体は、確定拠出型年金規約を定め、主務大臣の承認を受ける。
   
従業員、自営業者等は、指定団体に申請することにより、制度に加入する。ただし、国民年金の保険料を滞納している者等は、加入することができない。
   

(拠出)
 
従業員、自営業者等は、掛金額を任意に決定し、拠出する。
   
拠出には限度額を設ける。
   
企業の従業員については、企業は、従業員の掛金について従業員の給与から天引きし、指定団体に払い込む。また、自営業者等については、自ら指定団体に掛金を払い込む。
   
個人ごとの資産残高は、運営管理機関によって記録管理されるとともに、加入者が離転職した場合には、離転職先の制度に加入者の年金資産を移管する。
   


(2) 運用
 
加入者に係る年金資産については、運用の指図は加入者が行う。
   
運用商品は、時価評価が可能で流動性に富んでいること等の要件を満たすものとする。
   
運営管理機関は、加入者に対して一定数以上の個別の運用商品の提示、一定の頻度での預替えの機会の提供、投資教育などを責任を持って行うものとする。
   


(3) 給付
 
給付形態は、年金支給または一時金支給とする。
   
一定の年齢(例えば60歳)への到達、死亡及び高度障害を支給事由とする。
   
給与時は、加入者からの申請に基づいて運営管理機関が受給資格を確認し、その通知に基づいて、企業が拠出する場合の企業の従業員については資産管理機関が、企業が拠出しない場合の企業の従業員及び自営業者等については指定団体が支給を行う。
   





2.税制について
 
確定拠出型年金に係る税制上の措置については、拠出時、運用時非課税、給付時課税とすることを基本とする。
   
税制については、退職金課税や給与課税とのバランス、各種年金制度間のバランス、国際的整合性、世代間の公平確保等幅広い観点から、適正な課税の確保、とりわけ、拠出、運用、給付の各段階における適正な課税のあり方、貯蓄商品に対する課税との関連等に配意しつつ検討を行う。
   





3.今後検討する主な項目
 
(1) 制度への加入・拠出について
 
国民年金の第3号被保険者(サラリーマンの専業主婦)を制度の対象とすることの是非。
   
加入の年齢上限を何歳とするか。(例えば65歳)
   
拠出限度額の具体的な水準
   
個人の拠出を前提とする企業のマッチング拠出の是非。認める場合の具体的な仕組み。
   
公務員への適用の是非。認める場合の具体的な仕組み。
   


(2) 運用について
 
個々の従業員の意思にかかわらず、事業主が一括して運用指図を行うことの是非。
   


(3) 給付について
 
企業が拠出した掛金について受給権付与に条件をつけることの是非。認める場合の具体的な条件。
   
遺産形成を防止する等の観点からの支給開始年齢の上限など年金支給の方法についてのルール。
   


(4) その他
 
既存の企業年金等からの移行の可能性及びその具体的な仕組み。