橋本内閣総理大臣外交最高顧問の訪露

1999年4月22日


 21日、モスクワ訪問中の橋本前総理は、エリツイン大統領と会談(昼食会)を行った。今回の橋本前総理の訪問においては、2月のイワノフ外相の訪日、3月のマスリュコフ第一副首相の訪日、来月の高村大臣の訪露という政治対話の流れの一環としても、極めて有意義なミッションであった。


1. 概要

 今回の訪露はご夫妻での訪露であり、エリツイン大統領からの招待によるものであった。
 橋本前総理は内閣総理大臣外交最高顧問として昨年9月にもモスクワに来られており、その時には橋本前総理お一人であったが、その際、エリツイン大統領から、今後は家族ぐるみでお付き合いしたいとの申し出があり、今回、橋本前総理は夫人を伴いロシアに来られたという経緯がある。
 今回行われた会談の時間は、12:36〜14:15で、クレムリン内大統領府の会見室で、エリツイン大統領、ナイナ夫人が橋本前総理と夫人を迎え、大統領のプライベート食堂で、エリツイン大統領夫妻、橋本前総理夫妻及び日露双方の通訳のみで昼食をとりながら話をされた。話が弾み、14:15まで話が続いた。雰囲気も極めて和やかであったとのことである。
 昼食会に先立ち橋本前総理を迎えられたエリツイン大統領は極めて元気そうであった。大統領は、橋本前総理を「親友のリュウ」と言ってロシア式に抱擁し、歓迎の意を表された。


2.小渕総理発エリツイン大統領宛親書

 橋本前総理からエリツイン大統領に対し、小渕総理からの親書を渡された。


3.二国関係

(1)橋本前総理より、自分は、クラスノヤルスク会談、川奈会談の合意に従い、東京宣言に基づき2000年までに平和条約を締結するために全力を尽くすとの合意があるが、その実現に向け、今後も努力していくことを確認するために来た旨述べた。エリツイン大統領からは、平和条約締結問題日露合同委員会の活動をよくフォローをしている、多くの問題が解決されてきている、北方四島周辺水域における操業枠組み協定も実地されており、共同経済活動に向けての準備もされているとの現状の説明があった。
橋本前総理より、今後ともクラスノヤルスク、川奈での合意に従い、2000年までに平和条約を締結すべく全力を尽くすということで、日本側は約束したことは守っていく旨述べ、エリツイン大統領からも、お互いに約束したことは守っていこうとの話があった。
さらに、橋本前総理から、2000年までに東京宣言に基づき平和条約を締結するよう努力するとの観点から然るべく指示をしてほしいと述べたのに対し、エリツイン大統領は、自分は世論の意見にも充分に耳を傾けているが、全てのロシア人は日本人との友好協力を発展させていくことを支持していると述べて、2000年までの平和条約締結に向けて努力していくとの合意を確認した。
(2)クラスノヤルスクで両首脳が合意した「橋本・エリツイン・プラン」を含め、両国関係が進んでいることを評価する話があった。
特に、エリツイン大統領の強いイニシアチブで進められた「橋本・エリツイン・プラン」の企業経営者養成計画について、橋本前総理より、675名のロシア人研修生が訪日して研修し、2240名のロシア人研究生がロシアの日本センターで研修している、これに並行して行っている公務員研修では29名の公務員が訪日研修している旨述べられた。
これに対し、エリツイン大統領より、今後ともこのような「橋本・エリツイン・プラン」に基づく研修交流を更に補完していこうとの話があった。


4.エリツイン大統領の訪日

 エリツイン大統領の訪日については、5月末に高村外務大臣の訪露があり、その後エリツイン大統領の訪日となるが、エリツイン大統領より、小渕総理の親書にも早期訪日要請があるので、右を踏まえて考えていきたい、秋頃を考えているとの発言があった。既に両国間では、来月末の高村大臣が訪露する時に大統領の訪日時期を明確にしていくということになっているが、今回、エリツイン大統領の意向が示されたことで、今後、これらを踏まえて決められていくこととなろう。


5.コソボ問題

 橋本前総理から、コソボ問題は、複雑な歴史的、地理的経緯があり、ロシアがコソボ問題についていろいろと努力していくことは重要であるとして、これまでのロシアの努力を評価しつつ、これからもかかる努力が重要であると述べた。エリツイン大統領より、最近、チェルノムイルジン氏をユーゴ紛争解決大統領特別代表任命するなどしており、ロシアとしても、かかる努力をしていく旨述べた。
また、橋本前総理より、コソボ問題については、やはり米露関係が重要であり、米露関係にはいろいろな問題があると思うが、これらにつきよく話し合ってもらいたい、それがコソボ情勢の解決にもつながるのではないかと考えている旨述べた。