第七回国際エネルギーフォーラム
オープニングスピーチ
2000年11月17日

 第七回国際エネルギーフォーラム・開会式  

 橋本総理特使スピーチ  

 第七回国際エネルギーフォーラムの開催にあたり、共催国の日本を代表し、御挨拶申し上げます。

 私がこの地を訪れるのは総理大臣として一九九七年に訪問して以来3年ぶりであります。改めて、この美しい街リヤドを訪問できたことを大変うれしく思います。ご招待いただいたアブドッラー皇太子殿下を始めとするサウディ・アラビア王国の皆様に感謝申し上げるとともに、本フォーラムの開催に至るまでの労を取られたナイミ石油鉱物資源大臣閣下をはじめとする関係者の方々のご努力に心から敬意を表したいと思います。

 世界最大の産油国であり、世界経済を支える石油供給の最も重要な担い手であるサウディ・アラビアの都で、産油国と石油消費国が対話することは、大変に大きな意味があります。この重要な会議に共催国として貢献できることは、我が国として大きな光栄であります。

 石油は、現在でも世界のエネルギー供給の四○%を占めております。今日まで世界経済はエネルギーの安定的な供給に支えられて飛躍的な発展を遂げて参りましたが、石油はその中心的な役割を果たしてきたわけです。この、我々にとって最も基礎的で、必須のエネルギー資源である石油の価格がわずか一年のうちに半値に落ちたり、三倍以上に上がったりというような、極めて不安定な動きを示し、また三○ドルを超える水準で推移している現状にかんがみ、私は、この状況が世界経済に与える影響について懸念を有しております。

 例えば今週はじめ、APEC閣僚会合の場で報告された石油価格高騰のAPEC加盟国への影響に関するレポートでは、アジア太平洋地域の多くの国が、私と同様の懸念を有していることが伺い知れます。同地域のいくつかの石油輸入国については、経済回復の遅れの可能性も指摘されております。アジアが世界の成長センターとして復活しつつある今、この点について世界的視野から考える必要があります。

 世界には、この石油という人類に必須のエネルギー資源について、生産国と消費国があり、ここにお集まりの皆様は、そのいずれかの立場で本フォーラムに参加されているわけですが、現下の石油情勢は、双方にとって決して望ましい状況ではありません。原油価格が現在のような高い水準で推移した場合、消費国はもちろん、長期的には産油国にとっても需要減退による不利益がもたらされる可能性があるからです。すなわち、石油市場を巡っては、産油国と消費国の関係は、どちらかが得をすれば、もう一方が損をするというゼロサムゲームの関係にあるのではなく、石油市場の安定を通じて、産油国、消費国双方が利益を得るという、いわばウィン・ウィンゲームの関係にあるということを改めて申し上げたいと思います。

 こうした産油国と消費国の関係は、特に今年に入って、それぞれの枠組みの中で強く認識されてきたところであり、このような認識のもと、産油国、消費国がそれぞれ石油市場の安定に向けた努力を行ってきました。私はこうした努力について、世界経済の発展に配慮した大変歓迎すべき動きであると高く評価しております。

 同時に、消費国は、産油国が石油資源の輸出のみに依存した経済運営を行わなくて済むように、産油国側が自ら投資環境の改善を進められる中で、人材育成への協力を含む技術移転を行っていくべきではないでしょうか。

 ご列席の皆様、

 産油国と消費国の関係は、ともすれば対立の構図でとらえられておりますが、この国際エネルギーフォーラムは双方にとって貴重な対話の機会を提供してきました。石油市場の安定と経済の持続的発展を共通の利益として、産油国と消費国との関係は、今や新たな相互理解と協調の関係にあるという力強いメッセージを、このリヤドから世界へ広く発信していかなければなりません。

 私も共催国代表として、オランダとともに、最大限、主催国たるサウディ・アラビアをサポートし、本会合を成功に導いてまいる所存であります。

 日本が議長を務める第2セッションでは、エネルギーと持続可能な発展及び技術について議論が行われる予定であります。我々地球上に存在する人類が、持続可能な発展を実現していく上で、地球環境問題への対応は避けて通れない課題であります。美しい島嶼国が水平線の中に埋没してしまうのではないか、というおそれを抱いている人々がいます。そのおそれを決して現実のものとしてはなりません。地球上の温室効果ガス排出量の大部分は私たち人間によるエネルギー利用に起因するわけですから、エネルギー政策に携わる私共に課せられた使命は極めて重大であります。また、言うまでもなくエネルギー資源は限りあるものです。私たちはこの資源を子孫のために大切に使っていかなければなりません。私たちの生活がよって立つ環境と資源を十分に将来の世代に残していくために、産油国、消費国という双方の立場を超えて協力しようではありませんか。

 このためにも、エネルギーをできるだけ効率的に利用し、また一つのエネルギーに過度に依存しないようエネルギー源の多様化を進めること、さらにはエネルギー開発部門への投資を促進し生産の拡大を図ることなど、長期にわたるエネルギーの安定供給を確保することが産油国と消費国双方の利益にかなうものでありましょう。今次会合で建設的な意見交換を行おうではありませんか。

 また、本フォーラムでは、エネルギー需給の展望、今後のエネルギー産業のあり方などについても議論が行われる予定であります。こうしたエネルギー分野の重要な課題について、明日からのセッションにおいて活発な議論が行われ、産油国、消費国双方の理解が一層促進されることにより、先程も申し上げましたように、本会議が新たな産消関係の素晴らしいスタートとなることを期待しております。

 最後に、本フォーラムの開催に向けたナイミ大臣をはじめとする皆様のご努力に対し、改めて心から敬意を表しまして、私の挨拶とさせていただきます。

 ご清聴ありがとうございました。