登山中考えた事
1999年
6月20日

日本、中国、ネパール三国共同登山チョモランマ1988

  先日、NHKのラジオ放送の中で、バングラデイシュが洪水被害を無くす為、国民一人当り2本の植樹を推進する計画だと報道していました。その結果、現在国土の4%しか緑化されていない同国が、20%の緑化に成功するとの事です。

 しかし同時に、インドやネパールの緑化が進まないと、洪水被害は根本的には解消しないとも報じていました。73年、88年2回のエヴェレスト遠征に加わり、その外にも何回かネパール・ヒマラヤの登山隊に参加した私の体験でも、その通りだと思います。

 数年前から建設省の砂防関係の諸君が、日本の砂防技術をネパールに移転する為、現地で努力してくれております。

 本年3月末でフェイズ1が終了、これをフェイズ2に繋いで行かなければなりませんが、「その際、植林と併せて実施してくれ」と、私は今、彼らに頼んでいる所です。

 日本には、本当に立派な人口造林の歴史があります。例えば明治神宮の森、あれを武蔵野の原生林だと思って居られる方が以外に沢山おられますが、明治神宮の森は立派な人工林です。現代の私達から欲を言えば、小動物が生息できやすいように、実のなる樹木をもっと多く植えてくれていればと思いますが、でも、素晴らしい森だと思っています。

 小学校に入る前から、父に連れられて箱根連山や奥多摩などで山歩きの楽しさを覚えた私にとって、何より悲しい事は、以前歩いた時には、美しい自然林の中を歩いた記憶が鮮明に残っているのに、次ぎに行くと,一面伐採されて丸坊主になっている山肌を見る事です。 奥秩父、八ヶ岳周辺、北アルプス、彼方此方でこんな光景にぶつかり、その度に淋しい想いを胸に、帰って来ました。

 その内植林も進み始め、ホッとしましたが、気付いたのは、以前自生していた植生と関係なく、植えられる圧倒的な部分が針葉樹で占められていた事です。昔ながらの日本の山は、針葉樹も広葉樹も、喬木も潅木も適度に混生していたのでは?と感じたのは、きっと私だけでは有りますまい。 広葉樹林、少なくとも混生林をもう一度再生させる事を真剣に考えたい、何時頃からか、私はこんな夢を追い始めました。

 森林を再生する事が出来れば、鳥や獣も昆虫も当然よみがえる、夢で終わらせたくは無い、今、私は山の仲間を中心に、こんな夢を呼びかけております。

 森林が変われば、当然ながら河川の水質も変わりますから、淡水に棲む魚も勿論復活するでしょう。一度壊した自然を再生するのは容易な事ではありませんが、私達が挑戦するにたる夢ではないでしょうか?

 山登りの好きな私も、海外の山は勿論、国内でも山登りを楽しむ時間がまったく無くなってしまいました。

 しかし、それでも、こんな夢を皆さんと共有する事が出来れば良いな、私は今、こんな事を一人考えております。

富士山頂レーダーサイトを背景に