タイ訪問を終えて
 

 9月16日からタイのバンコックに出張し18日帰国しました。短い旅でしたが非常に密度の濃い旅行になりました。
 元々私が総理時代、デンヴァー・サミットの席上、G8が結束して寄生虫対策に取り組もうと提唱したことが翌年のバーミンガム・サミットで正式に動き出すことが了承され、そのための核になる研究機関を何処にするかが問題になっていました。
 アフリカでも来年から動き出しますが、一足先にアジアがスタートする準備が整い、タイのマヒドン大学の熱帯医学部に「橋本イニシアティブ・トレーニングセンター」が完成し、国際寄生虫対策ワークショップが実際の活動を開始するに当たって基調講演を引き受けていました。
 寄生虫は今や日本では殆ど制圧したものの、世界的には目立たない地味な問題でありながら深刻な影響をもたらしています。
 ところが出発直前の9月11日、アメリカで発生した同時多発テロのため、果たす役割が大きく変わりました。小泉総理のタイ訪問が延期され、その代わりを急遽私が埋める事になりました。
 当初予定していたスダラット保健大臣、スタム大学庁長官との話し合いの方が従、タクシン首相やチャワリット副首相兼国防大臣との個別会談のほうが主、たまたま首相、副首相ともに旧知の人々、本音で語り合えたことは幸いでした。 
 私はどんな事があってもテロには絶対に屈してはならないと考えています。同時にテロと闘うためには国際的な協力が欠かせないことを骨身にしみて知っています。ペルーで起きた日本大使公邸人質事件の際も「テロには絶対に屈しない」との一点は絶対に譲らなかったつもりです。あの事件は結果的にペルーの当時のフジモリ大統領の決断で、日本人人質は無事救出されましたが、ぺルー人人質一人、救出に当たってくれたペルー特殊部隊の 隊員二人の犠牲を出しました。
 タクシン首相とはテロと闘う両国の姿勢を確認する以外に麻薬・覚せい剤対策に対する協力やミャンマー情勢を語りあい、チャワリット国防相とも同様な問題のほか、アジア経 済の現状なども話題となり充実した会談だったと思います。
 当初の予定の方もおかげのことに順調に進み、スダラット保健大臣、スタム大学庁長官とは両国の医療分野での今後の協力をはじめ社会保障、福祉分野、医学教育など様々な分野でのお互いの状況を語り合うなどこれも有意義な会合をもつことが出来ました。 時差ぼけをする暇もない酷く忙しい旅でしたが、充分役割を果たせたことに満足しております。

 
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