国連「水と衛生に関する諮問委員会」を終えて
2004年7月22日〜23日国連本部にて
 “国連水と衛生に関する諮問委員会“は、アナン事務総長の発案により今回新たに国連事務総長の諮問機関として発足しました。メンバーもアナン事務総長の強い要請を受けて選ばれたメンバーです。国連の中にはすでに水に関する議論を出来る機関がいくつも存在しています。
  私もアナン御本人から電話でご要請を受け、小泉総理にもご相談の上、この諮問委員会の議長をお引き受けをすることになりました。
  とはいうものの大変な話、しかも委員のリストを見ても知っている方はごく一部。アナンさんの問題意識がどこにあるのかはっきりしていない、事務総長と担当次長との間の意思疎通もスムースではないようだし、開会前日になっても事務局の用意したペーパーに、日本が指摘した問題が入っていない、これで本当にこの会議はうまく行くんだろうか?始まるまでの不安は相当のものでした。
  そんな状況の中、7月22〜23の両日、国連本部ビルの第8会議室を舞台に、何とかこの会議が動き出してくれたことをまずご報告しなければなりません。
 
 前日、私はあのテロの現場、グラウンド・ゼロに花を捧げてきました。あの悲劇の直後の状況はありませんが、金網で囲まれた現場一帯、犠牲になられた方々のお名前をすべて彫りこんでいる銘版が釣られ、事件発生以前の周辺の写真など、祭壇に献花しながらテロの恐ろしさに改めて思いをはせた次第です。私の友人のお子さんがあの日、あのビルの中の会社に勤務しており、タバコを吸う為に表に出た直後、旅客機が突入したとのことで、九死に一生を得た経験を持ち、あらためてその時の現場での恐怖を聞かせてもらいました。
 20名以上の委員はみなそれぞれに水に従来から何らかの形で携わってきた方ばかり、非常に激しい信念とご自身の意見をお持ちになる方ばかり、一時期は相当とげとげしい雰囲気も生まれ、本当にどうなることかと心配しましたが、みんな努力しなければならないことは十分わきまえている人達だったこともあり、二日間の日程は実り多い結果を生み出したと思います。
 日本にとってまったく未経験の分野の最大の問題は“国際河川の管理”だと思います。関連して“越境水”の問題でしょうか?数年前起きたライン川の氾濫、増水が忘れられないヨーロッパからの参加者から強く提起された問題でした。
 私が事務局に事前にお願いしておいたのに議題に追加されていなかったのが“水と災害”、洪水であれ、旱魃であれ、水の災害は衛生と切り放てない問題です。また、水と衛生は貧困削減と切り離すことの出来るテーマではありません。
 「この諮問委員会は独立したグループであり、高い政治的注目度を伴う行動につながる戦略的アドヴァイスを行なうという使命を有する。」、こう位置付けられ、どうにか滑走路から離陸しました。
 日本政府関係者からも本当に協力をいただきましたが、私自身にもプロのスタッフが必要、その役割をNPO法人“日本水フォーラム”の皆さんにお願いすることにしました。気持ちよく受けていただき、感謝しています。昨年の第3回“世界水フォーラム”実現に向けて一緒に取り組んだ仲間の皆です。皆には恨むんだったらアナンさんを恨んでくれと頼みました。
 詳細な報告は別に譲るとして、第2回会合は三つの作業部会ともども本年12月、東京で開催することになります。ちょうど12月9,10両日東京で“統合水資源管理国際会議が開かれるチャンスを使わせていただきました。初め、次回の日程だけでも決められたら今回の会合は成功!と発破をかけられていただけにへたくそな議長も、かろうじて合格点をいただけたのかな?と感じておりますが、世界的に関心の高い“水”に対して、ODAひとつをとっても、もっと日本でも関心を持っていただきたいと、心から願っております。