APFED5
(アジア太平洋環境開発フォーラム第5回会合)
をおえて

カザフスタン共和国(平成16年5月22日〜28日)
 カザフスタンの首都、アスタナで行なわれた"APFED 5"(アジア太平洋環境開発フォーラム)の議長を務めるため、5月22日〜28日行ってきました。
 
APFEDメンバーと 会議風景
 いったんフランクフルトで一泊、翌日カザフスタンの古都アルマティで一泊、アルマティからまた数時間飛行機に乗り、ようやくアスタナに到着します。
 カザフスタンは古代にはスキタイ文明の栄えた地域、黄金文明とも言われるほど金を使ったさまざまな古代の遺品が発掘されている国でもあります。
 フランクフルトからアルマティへの飛行機の便はもともと色々問題があり、事務所の諸君が苦労してくれたコースです。通常でも6時間半くらいのフライト、アルマティへの到着は深夜の予定でした。ルフトハンザの便が離陸して2時間あまり飛行した後、急に機材整備不良のためフランクフルトに引き返すと機内放送があったのには本当に驚きました。結局別の機材に移乗して、アルマティに到着したのは翌日の午前4時半、その午後にはアスタナに移動しましたが、本当に珍しい体験をしたと思います。
 アルマティには第2次世界大戦敗戦後、旧ソヴィエトに抑留されて、この土地に連れてこられたまま亡くなった方々が埋葬されています。その墓地に献花させていただき、アスタナに向かいましたが、墓地がきちんと管理されていたのが救いでした。
 アスタナでは旧知のトカエフ外務大臣、これも旧知のサマコヴァ環境保護大臣、アフメトフ首相、ナザルバエフ大統領とそれぞれ会談するなど忙しい日程に追われました。
トカエフ外務大臣との会談 アフメトフ首相と会談・サマコヴァ環境保護大臣
との会談
 カザフスタンは地下資源に富んだ国です。石油も豊富ですし、その他の鉱物資源も豊かです。国民所得も高く、中央アジアの中で、既に途上国の域を脱しているといっても間違いではないでしょう。その資源が、今、この国にいくつかの問題を投げかけています。旧ソ連時代から地下資源の発掘は続いていました。しかしその採掘跡がきちんと管理されず放置されているために水銀による水源の汚染も起きています。鉱山廃水での問題はほかにもあるでしょう、日本における水俣の経験に強い関心が示されました、会議の中だけでなく記者会見の質問にもありましたが、環境省から資料を提供することになると思います。
 セミパラチンスクという地域は旧ソ連時代の核実験場でしたが、現在は残存放射能の問題と多くの被爆者を抱える地域として知られています。現在、広島大学の方々が、現地で協力してくれているとカザフスタン側から度々感謝されました。
 アラル海が干上がってしまいそうな状況、カスピ海周辺の生物多様性の問題、この国の抱える環境問題はどれも深刻で、アラル海の植林ひとつを取り上げても私たちが手伝うべきことがたくさんあります。カザフの人々は「この国はまだ若い国」とよく言いますが、それだけに課題も多いということでしょう。
 会議は予想以上にスムースに進み、多少時間が残るくらいでした。
カザフスタンはイラクに軍隊を派遣している国の一つです。今後もその方針を変えるつもりは無いとのことでした。首都のアスタナは中心部が黒川紀章さんの設計、急速に工事が進んでいます。
 先日訪中したナザルバエフ大統領と胡錦涛主席との間で、2005年末までにカザフスタンと中国との間に石油パイプラインを敷設することが決定したということです。中国は最近まで石油生産国だったのが、近年輸入国になりましたが、この巨大な国が、中東の石油輸入を本格的に始めたら、これは日本にとっても必ず影響があると思います。計画では最初の3〜5年は毎年1,000万トン、その後は2,000万トン供給する予定とのことでした。中国が安定供給を受けられる国が出来ることは、中国が近隣から安定供給を保障されるという意味でよい話だと受け止めて来ましたが、本当なら日本自身がパイプの先を日本に向けさせるような仕掛けを考えたい話でした。
ナザルバエフ大統領と 左からサマコヴァ環境保護大臣・
トカエフ外務大臣 ・ナザルバエフ大統領と
 モンゴルに行ったときには馬乳酒で相当びっくりしましたが、カザフスタンでは馬肉のソーセージに驚きました。決して不味くありません、欲を言えばちょっと塩がきついかな?という感じです。ラクダのミルクを飲みますか?と聞かれたんですが遠慮しました、今になって飲んでおけば良かったと後悔しています。

 帰途、フランクフルトで旧知のヨーロッパ中央銀行総裁のトリシェさんを訪ねてきました。私が大蔵大臣のころのフランス大蔵省の国庫局長、前任はフランス中銀の総裁でした。物価に非常に敏感に反応するヨーロッパの金融責任者らしく、世界的な原材料価格の動向に対する警戒感は私よりはるかに厳しいものがあります。さまざまな意味で良い勉強になった今回の旅行でした。

APFEDメンバーと 大統領府内