日本・アラブ対話フォーラム第二回会合を終えて
エジプト・アラブ共和国・アレキサンドリヤにて
 3月2日〜6日まで、エジプト・アラブ共和国、カイロ、アレキサンドリアを訪問しました。昨年9月に第1回を開催した日本・アラブ対話フォーラム、第2回はエジプトがホストすると大変な意気込みでアレキサンドリアでの開催となったのです。
 
 古代史の中に大きな比重を占めるエジプト、その昔すばらしい図書館が在ったといわれるアレキサンドリアに、文化的価値を同様に誇れる図書館を作りたい!これはエジプトの人ばかりではなく、アラブ世界の夢でもあったようですが、各地のアラブ世界の協力を得て、数年前に完成したようです。蔵書総数70万冊、無論最新の電子技術を駆使したその図書館は、行ってみて此処でどうしても日・アラブ対話フォーラムを開きたいと頑張ったエジプト代表団の気持ちが分かりました。
 ことに海中から引き上げられた古代エジプト、古代ギリシャ、古代ローマなどの彫刻や陶器の壷、皿等、様々なものが海中から拾い上げられ展示されているあたり、後の日程がなければ本当にじっくり見たいものがごろごろしています。
会議自身も非常に実のあるものとなりました。
 アラブ側から議論のポイントを文章化したいという希望が出て、議長総括の文章をまとめましたので最後にその全文を掲載させていただきます。おそらく第3回はサウディアラビアがホストすることになるのでしょう、サウディの団長のゴザイビ企画大臣がその希望を漏らしていました。
 アラブ側の希望が日本とのFTA(自由貿易協定)にあるということは分かっておりましたが、なにかFTAというものが魔法の杖のように思われているのではないかという、危惧の念が消えません。

 今回は、イラク復興支援のため、日本とエジプトが協力してイラクの医療関係者の再研修を行なうプロジェクトをスタートさせてきました。カイロ大学医学部、付属病院もふくめ、日本のODAで整備したもの、そこにイラクからの研修者を迎え、5日から開始です。105人のイラク医療関係者を予定しましたが、どうしても国を抜け出せない人もあり99人でスタートしました。
 エジプトのムバラク大統領とも久しぶりにゆっくり会談しましたが、のっけからアメリカ、ブッシュ大統領が今年のG8サミットで主張しようとしている"いわゆる大中東構想"を強烈に批判しました。民主化のスピードが早いか遅いかはそれぞれの国の事情で決まること。他国が押し付けるべきではない、日本の外務省は私にブッシュ構想の瀬踏みをして欲しかったようですが、案の定の反応、引き受けなかったのが正しい選択だったと思います。もともと、そんなこと聞いてみる必要もありません。答えは分かっていることです。
 それより、2回の記者会見でいずれも現地の記者から「なぜ日本は自衛隊を派遣したんだ?」という質問が出たこと、フォーラムの席上でも「日本は自衛隊を派遣すべきではない、民間人を送るべき。」という意見が出てきたことが気になります。
 まず、事実として、まもなくエジプトと日本が協力してイラクの医療関係者の再研修を開始する、このカイロでカイロ大学を拝借して。ここに自衛隊は関係していない。この事実を述べた後、
「日本がイラクに攻撃を仕掛けたものではないことはご承知の通り。その復興支援に際しても、最初から自衛隊ありきではなかった、そして民間人による支援を浄水施設、発電所、セメント工場の再開など一生懸命検討していたこともご承知の通り。そのプロジェクト発掘の中心となって働いていたわが国の二人の外交官がテロに遭い、殺された。彼らは誰のために努力したと思うのか!彼らの遺志を継ぎ、われわれはイラクの復興に尽くす、ただし今後黙って殺されはしない。自分の身を守れる人間を送ってあくまでもイラクの復興に尽くす、それが自衛隊の役割だ。一日も早く彼らがイラクにいる必要がなくなり帰国できる日が来ることを祈る!」さすがに静かになりました。ただ、こんなことを私が言うより前に日本政府がもっと広報活動に務めるべきです。彼らの志に報いるためにいっそうの広報活動が必要、私は大声で皆さんに訴えたい気持ちです。