年の暮れも間近な12月14日、成田を出発、イギリス、フランス、ドイツを小泉総理の特使として駆け回り、18日帰国しました。
自衛隊のイラクへの派遣が行われようとしている今、国際社会にあらためて日本のスタンスを説明し協力を求める狙いの特使派遣、
中山元外相が国連、高村元外相が中東のうちエジプト、サウディアラビア、逢沢外務副大臣が残りの中東(クエート・シリア・ヨルダン)、
私がアメリカと大きな溝の生まれている独仏を受け持ち、少しでもその溝を埋める役を出来ればそれで十分、そのためにもEUの仲間であり同時に
アメリカを支持しているイギリスと意見をすり合わせたい、そんな思いでまずロンドンに入り、イギリスのストロー外相との会談に臨みました。
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ストロー外務大臣と外務省にて会談 |
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ロンドンのヒースロー空港到着の2時間くらい前に"サダムフセイン逮捕"のニュースが飛行機の中に飛び込んできて、詳細が分からず一瞬騒然と
したのも今日となってはよき思い出。この急展開により東京で用意してきた草稿は役に立たず、急遽戦線を建て直しどうやら無事に終わりました。
イギリスは先日イラクでテロのために亡くなった奥大使が勤務していた場所、今度陸上自衛隊が展開を予定しているサマーラあたりの治安も現在
イギリスが担当しています。今後自衛隊の安全確保についても緊密な連携が求められています。日本が、独仏を自然体でイラク復興の仲間に日独、
日仏といった形で引き込もうという考え方にイギリスの賛成を取り付けることが出来ました。
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ストロー外務大臣と合同記者会見 |
フランスでの記者会見 |
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ユーロスターに乗ったロンドン・パリの鉄道利用の移動はスムーズで、日本の新幹線の強敵になるのが無理からぬ、という印象でした。
ただし安全チェックは予想ほどしっかりしたものではありませんでした。車内の雰囲気は"おしゃれ"で、電気スタンドの笠など細かいところで
気が利いているなと思いました。
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ユーロスター |
ユーロスターにて岡本補佐官と一緒に (ユーロスター内) |
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パリに着いてまもなくシラク大統領との会談、親交のあるシラク大統領でしたが、今回はイラクとの戦闘に、完全にアメリカに同調した日本と、
真っ向から対立したフランスの立場の違いが反映して、多少緊張した感じではなかったかと思います。ロンドンでイギリス側と話し合った効果もあり、
すぐ普段のシラクさんと私の感じに戻りましたが、フランスの雰囲気は明らかに6月シラク大統領の招待を受けて訪仏した時とは変化し始めていました。
私が会う直前、シラクさんはイラクの統治評議会のアル・ハキン代表一行との会談を終わったばかりでした。これはややもするとアメリカ・イギリスの
傀儡扱いを受ける統治評議会に権威を与える手法として、私は高く評価しています。会談中シラクさんが語ったことですが「私に会う前ドイツのシュレーダー首相
とも相談した」とのこと。おそらく独仏両国も徐々にとはいえイラクに対して国際協調路線に転換したいという気持ちが芽生えはじめていた所に私が訪問したのでは
ないでしょうか?アメリカが旧知のベーカーさんを同時期、大統領特使としてヨーロッパに派遣したことも相乗効果を生んだと思います。
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シラク大統領との会談(エリゼ宮にて) |
シラク大統領よりお見送りをうける
(エリゼ宮にて) |
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ドイツのシュレーダー首相との会談もきわめて気持ちの良いものとなりました。シュレーダー首相は事前にシラクさんとベルギーの首相をも交え、
食事をともにしながら十分話し合ったということで楽しい意見交換が行えたかと思います。アル・ハキム一行はシュレーダー首相とも会談したはずで、
統治評議会に厳しかった独仏の首脳との会談は統治評議会にとっても大きな成果であったと思われ、これをその場で高く評価するチャンスを与えられたことは
日本にとっても望外のものでした。
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シュレーダー独首相と(首相府にて) |
シュレーダー独首相と(首相府にて) |
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こうした雰囲気の中から私のほうから提案したイラク復興に関し日仏両国で協力する可能性に対し、シラク大統領のほうから"日仏だけではなく独も加えて"
日仏独3ヶ国での共同復興支援を模索することは出来ないかとの発言があり、シュレーダー首相は具体的に警察官研修について早急に共同行動が出来るよう、
3ヶ国で話し合い一日も早く合意をまとめようという話になり、日独仏各々の交渉窓口になる人間を具体的に決めようというところまで話が進みました。
アメリカがベーカー大統領特使の派遣に踏み切った原因、つまりイラクの債務問題については独仏ともにパリクラブで話し合おうというトーンで一致していましたが、
これは日本も了解の出来るラインだと思います。
ロンドン一泊、パリ一泊、ベルリン一泊プラス、機内で二夜、今回も忙しい旅でしたが中身の濃い旅行だったと思います。3カ国とも、記者会見または記者懇談で、
特に外国人記者から出た質問の中には、アメリカと終始行動をともにしてきた日本が何故今独仏に総理特使を派遣したのか、独仏と共同でイラク復興支援活動をすることに
アメリカが不愉快な顔をしても良いのか?といった質問もありましたが、むしろ圧倒的な関心は逮捕したサダムフセインをどんな裁判に掛けるのか?サダムフセインは死刑に
すべきか?その裁判の場所、裁判官にイラク人が何%くらい含まれるべきか?逮捕したサダムフセインの写真が公開されたことは捕虜の取り扱いに対する国際協定に違反するのではないか?
など、私として答えられない質問、むしろ答えてはいけない質問もありましたが、これから先のこの問題の取り扱いの難しさがにじみ出ているようでした。
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