日中佐官級人物交流を終えて
平成15年2月26日〜3月1日


2月27日 八一大楼にて
遅浩田国防部長との会見


2月27日 八一大楼にて
遅浩田国防部長・熊光楷副参謀総長と
自衛隊佐官級交流団一行


2月27日 中南海にて
銭其シン国務院副総理との会見

 
2月26日から3月1日、中国国際戦略学会の招待を受け、笹川平和財団、笹川日中友好基金の皆さんとともに北京を訪問して来ました。
2001年10月、私が江沢民主席(当時の肩書き)と話し合い、日中間の民間安全保障対話(交流)が大切だとの合意にもとづきスタートさせたのが、人民解放軍と自衛隊の中堅幹部としての佐官級交流と言うプログラムでした。
日本側から訪中するのもこれで3回目です。
人民解放軍総参謀部は八一大楼と言う大変豪勢な建物の中にあり、今回もそこで旧知の熊光楷副総参謀長に出迎えを受け、久闊を叙する暇もなく、イラクを巡る問題、北朝鮮の核を巡る状況など突っ込んだ話し合いが始まりました。
イラク問題についての中国の姿勢は、安全保障理事会の常任理事国として、更に徹底的な査察を行い、イラクが大量破壊兵器を隠していないことを確認する努力をすべし、というものであり、アメリカ、イギリスとは明らかに異なる主張をしています。
北朝鮮については、従来から中国は朝鮮半島に核は存在させないと言う政策だったことを、ぜひとも当方に信じさせたい、中国の北朝鮮に対する影響力も限定的なものであることを知ってもらいたい、と繰り返しておりました。
今回の訪中で、中国国際戦略学会で講演する機会を与えられたのは大変幸いでした。一時間講演、一時間質疑は結構きついものがありましたが、良い経験でした。その折の原稿は別に掲載させていただきます。
今行われている全国人民代表者大会で、新しい中国の人事が確定します。新しいメンバーはまだ決まっていない時期の訪問、定年で第一線を退く幹部二人には最後の会談の機会が出来ました。
銭基シン副総理は外交部長(外務大臣)としてしばしば論戦した好敵手、遅浩田軍事委員会副主席(国防大臣)は長い間日本に対して厳しい目を向け続けた抗日戦争以来のベテラン軍人、私が総理の時、ようやく初めて日本を訪問してくれた人物、様々な思いを持ちながらの会談でした。
視察は首都防衛の責任を持つ空軍題24師団だけ、私は参加しました。それほど大きくない滑走路一本の部隊、持っている戦闘機も旧ソ連のミグを中国流にしたJ7,J8と言った機種、ただし緊急給油装置など、中国側から見せたかったものはいくつかあったようです。安心したのは自衛隊の諸君が穏やかな言葉を使いながら、まったく遠慮なく、がんがん質問し、厳しい意見をぶつけていることでした。中国側も反論したり、逆に日本側のやり方を質問したり、良い光景だなと思いながら見ていた次第です。
自衛隊の諸君はそのまま昆明に。昆明陸軍士官学校、雲南省軍区司令部、南京軍区司令部、南京軍区第179旅団訪問視察、上海警備区朱家角鎮視察(これだけは文字を見ても内容が分からない、海軍系)、海軍東海艦隊上海基地、海軍上海基礎司令部、これだけの視察日程、大変だったろうな、でも、得たものも大きいに違いない,そう期待しています。お互いが隠すより、思い切って手の内をさらしあう中で誤解だけはないようにしたい、誤解からの不信感だけは無くしたい、そんなことを考えながらの今回の旅でした。小泉総理になってから完全に止まってしまっている日中両国の安全保障対話の中で、唯一動いている対話、今後も大切にしたいものです。