GLOBE シンポジウム
新たな"水"意識の改革を目指して
〜21世紀の水を守る〜


2004年1月23日(金)
於:憲政記念館

 GLOBE(地球環境国際議員連盟)は、1989年に先進主要国の国会議員によって創設された地球環境保全をテーマとした超党派の国際議員連盟です。6つの地域GLOBEならびにGLOBEネットに参加するメンバーは、100カ国、750名を越え、世界中で活発な活動をしています。国連に正式登録された唯一の議員グループとして国際会議に参加し、積極的に提言をしてまいりました。

 昨年京都で開催されました、第3回世界水フォーラムにおける特別プログラム「水と国会議員」における成果を検証することが、このシンポジウムの最大の目的です。「水と国会議員」に出席した国内外37名の国会議員が約5時間にわたる集中討議を行い、採択にいたった「水宣言」(下記参照)は、水資源問題に関する地球規模の問題に対し、国会議員が真剣に取り組む姿勢を打ち出したものであります。非常に意義深い内容であり、その成果を見守っていくことが今後非常に重要です。そこで、第一部においては、同会議に出席した海外国会議員9名からの水フォーラム後の活動成果報告をご紹介し、また、尾田栄章第3回世界水フォーラム事務局長より、第3回世界水フォーラムにおける特別プログラム「水と国会議員」の意義についてお話をしていただきます。第二部においては、GLOBE Japanの取り組みとして、第3回世界水フォーラムで取り上げた国際問題から国内問題に視点を置きかえ、廃棄物が及ぼす水質汚染に対して問題意識を深めるとともに、立法者としていかに取り組んでいくべきかを検証します。

プログラム
                 
総合司会:広中 和歌子 GLOBE Japan副会長

14:30 受付開始
15:00 開会の辞:橋本 龍太郎 GLOBE Japan 会長

第一部 『第3回世界水フォーラム特別プログラム"水と国会議員"フォローアップ』
15:20 報告:「第3回世界水フォーラム特別プログラム"水と国会議員"の成果」
     谷津 義男 GLOBE Japan事務総長 

講演:「第3回世界水フォーラム後の水資源に関する世界の動向」
     尾田 栄章 第3回世界水フォーラム事務局長 

16:05 休憩

第二部 『廃棄物が及ぼす水質汚染』
16:15 
基調講演:小池 百合子 環境大臣 
講演:「不法投棄が及ぼす環境汚染」 講師:石渡 正佳 (千葉県庁職員)
講演:「廃棄物が及ぼす水質汚染」 講師:山上 毅 (太平洋興産株式会社取締役社長)

パネルディスカッション

18:10 閉会

GLOBE Japanに関する御案内
GLOBE Japan ホームページアドレス
http://www4.osk.3web.ne.jp/~globejp/




橋本龍太郎 GLOBE Japan 会長 挨拶

 今日は私達のシンポジウムにこうしてたくさんご参加いただきまして本当にありがとうございました。振り返ってみますと昨年の今頃は第3回世界水フォーラム、果たして琵琶湖水系で成功できるかどうか、非常に神経を尖らせていた時期にあたります。しかも丁度イラクへの戦闘開始が重なり、海外からのお客様が無事に来てくださるだろうか、そして無事に帰っていただけるだろうか本当に心配いたしました。しかし結果的には本当に高い評価をいただけるだけすばらしい成功を収めることが出来ましたことをこの場を借りて改めて御礼を申し上げたいと思います。そしてこのGLOBE Japanの皆様が中心となり、その中の一つのテーマとして特別プログラム「水と国会議員」を持っていただきました。これも初めての試みでありましただけに、大変あちこちから高い評価をいただきました。この辺についてはそれぞれまたお話があると思うのですが、それなりに今私の中に色々なことが絡み合って浮かんでまいります。



 また水フォーラムの中で、子ども達による水のシンポジウムが滋賀で行われました。そしてそのとき日本の子ども達、非常に良く調べ、勉強したレポートを発表してくれたのですが、一部の国(シェラレオネ)の子ども達からは、「日本の子ども達が問題だとする水が、なぜ問題なのか分からない。河川に生活排水が多少紛れ込んでいるくらいで、何でその水が危険な水だと言わなければいけないのか。我々にとってそれはまったく問題のない水なのだ。」という言葉が返り、本当に双方の子ども達が相手の言っていることを理解するのに大変苦労していた光景がなかなか私の頭から消えませんでした。そしてそんな思いをもったまま実は先週の末までグァム、パラオ、ペリリューといったかつて日・米が激しく戦い、我々の先輩が多数亡くなった戦域を訪れていました。それぞれの場所に作られた慰霊碑を、在留邦人の方、現地の方が協力をしながらきちんと管理をしてくださっているその姿も非常にうれしいものでした。たまたまそれぞれの場所は、私がかつて遺骨収集のためにまわった所でした。そして最初に訪れた時は、それぞれその戦域での生き残りの方が一緒に行ってくださいましたけれども、その方々が口々に言われたのは「水なんだよね」。「ジャングルの中で隠れて、そしてその米軍の接近を狙い撃ちしようと隠れている。だけど最終的に見つかっちゃうのは、水を汲みに行く時なんだよね」「米軍は良く知っていて、水場に対して監視兵を置き、そこで我々も捕まっちゃったんだよね。」こんな話をうかがいました。
 そしてそんなことを思いながら、それぞれの慰霊碑に水を手向けてきたところです。そしてそう考えて見ますと、例えば、国内での硫黄島の慰霊碑、あるいはこれは南太平洋戦没者慰霊協会がお建てになったグァムの慰霊碑、両手をあわせ、その窪みに水を溜めるそんな姿をイメージした慰霊碑が作られています。おそらく設計された方がそのような思いを込められたものでしょう。そしてその水の貴重さはこれら南太平洋島諸国、その時代とまったく変わっていません。変わったのは、廃棄物の種類が増えたこと、量が増えたことだけです。そして、本当に悲しい思いをしましたのはパラオで、旧日本軍関係の建物、今になりますと通信本部という説があり、あるいは自家発電装置を全部集結させた建物だったという説があり、いずれにしても日本軍関係の建物だったとうことだけ分かっているのですが、当然のことながら見つかりにくいような場所に建てられている建物です。正面は砲弾の弾痕だらけの建物。その前に焼け爛れた戦車が二両、連送機関銃が二丁、真っ赤にさびている。中に入ってみたら、それが実は粗大ゴミの捨て場になっている。同行してくれました大統領の秘書官が「ごめんね。あなた方が来るまでに何とか片付けたかったんだけれど、パラオの能力ではこれらのゴミを処理する能力がない。どこか運び出したいと思ったけれど、運びだす機械もない。本当にごめんね。」謝られましても、これはなんとも胸の詰まる思いでした。ところがよく聞いてみますとそうした島嶼国、パラオという国は343の島に20000人弱の国民が住んでいる。ですから、例えばリサイクルをしようとしたって効果の上がるようなリサイクルはパラオだけでは組み立てきれない。そしてミクロネシア、グァム、サイパン等々、連携をとりながら共同で廃棄物処理をやろう。グァムがリサイクルゴミを引き受け、焼却・埋立のゴミをパラオが引き受ける。そんな計画も話し合われていました。



 本日、外務省の石川国際社会協力部長がおいでですけれど、この度の外遊に同行していただき、外務省の国際協力として何らかの応援が出来るようにしていただく、そんなお願いもしています。その上で、なるほどと思いましたのは、彼ら一応ODAとして日本に対して協力要請はされたようです。しかしパラオのGDPが一人あたり6,157ドルと大幅に日本の無償資金供与規準(1,415ドル)を超えている為に支援できない、ですから主に無償援助をしてきたわけです。また、その炉の設計に問題がありパラオで設計されたそのままのものを使えば、確実にダイオキシンの発生が見込まれる。しかも建設を予定している場所からいって、それは直ちに水の汚染につながる。そんなことがあって日本側はこれは少し考え直してということをパラオ側に注意したようですが、パラオの方にはそこがそう受け取られていなくて、日本がもとの日本人に縁の深い中村前大統領(日系2世)の時代にはいろいろなことをしてくれたけれど、純粋なパラオ人の大統領になったら協力してくれない。こういうところのちょっとした誤解、少し説明をすれば解ける誤解がまだまだ我々の周りにはあるのだな、そんなことも思いました。そしてこの水フォーラムの準備をしながら、事務局長をしていただいた尾田さんたちと我々が夢を見ていた一つ。それはかつて東京だけではない、大阪もそうだったのですけれど、日本は非常に水運の栄えた国であり、水路が都市の中を縦横無尽にはしっていた。今その上に全部ふたをして道路にしてしまった。しかしそれでももう一度水路を復活することが出来ないとは言えないだろう。どこかで、一度この水フォーラムの記念でもよいから、東京の水路をもう一度生き返らせてみようよ。そんな話をしておりました。たまたまあのSARSの騒ぎの最中に私は北京へ行かなければならず、その時期北京に行ったわけですが、北京が今同じ事を考えています。そして天安門広場に隣接する人民大会堂のそばを完全に埋立て、資材置き場にしていた水路のうちの一つ、菖蒲川というのを完全に元に戻しました。そして昨年の秋行ってみました時には、ただ水路を元に戻しただけではなく、そこにあった町並みを同じように戻し、市民の憩いの場としてこれを提供していました。非常に美しい。しかし中国で、北京の人々が水路を戻せるならば、日本の我々がかつての水路を戻せないはずがない。そんなことを思いながら帰ってまいりました。



 おそらく今年の相当早い時期に世界水フォーラム、次回の開催国であるメキシコはキックオフをすると思います。そこにも多くの方々にご参加いただき、「この琵琶湖から発した流れが途絶えないようにGLOBE Japanとしても全力を尽くしていきたい」、今日もそのような思いでシンポジウムを開かせていただきました。どうか最後までよろしくお願いいたします。ありがとうございました。




       
水宣言

 我々は第3回世界水フォーラム特別プログラム「水と国会議員」において、水および水資源に関して討議を行った。その結果、次のような認識を共有していることを改めて確認した。


1 水が私たちの生命維持及び農業、産業等の社会経済活動にとって不可欠であること。実際に利用可能な水の量は非常に限られていること。また私たち人間が水を汚染してきた結果、水質が危機的状況にあること。

2 利用可能な水は地理的に不均等に分布し、それゆえに水が国の内外において摩擦や紛争の大きな原因の一つになっていること。特に国際河川・湖沼等の国際的な水への取り組みにおいて、1997年に採択された国際河川に関する国連条約が要請するように、上流域から下流域まで流域国すべての国々による共通の認識と行動が必要であること。また水にかかわる環境の保全及び紛争解決に向けて各国政府、国際機関、NGO、市民社会、民間企業、及び水にかかわる全ての人々が行動する必要があること。その際に当該国に加えて国際機関の果たす役割が重要であること。

3 立法者が問題解決の重要な主体の一つであり、各国政府に働きかけることができる特別で責任のある立場に立っていること。

 このような認識を踏まえて、立法者である我々は、限りある水及び水資源を将来にわたって安定的に確保するために、以下の活動を遅滞なく行うことを宣言する。

1 自国の政府に対し、水の重要性を認識させ、中央政府と地方政府の連携を保ちつつ、安定した水の確保に基づく持続的開発の重要性を認識させること。そのために各国は、国民との協力のもとに、適切な措置をとること。また自国の国民に水を公平に分配する社会システムを構築し、国民が安全な水に公正にアクセス出来る環境を実現するよう努力すること。

2 国際的な水問題の解決のために、自国の政府に対し科学的知見を高めるよう要請し、その共有した知見にもとづき他の流域国との対話を促すと共に、国際機関、統合的水資源管理システム等を活用した紛争解決のメカニズムを確立するよう提案すること。

3 我々は、国際連合がこの「水宣言」の趣旨にのっとり、水資源の重要性を確認し,その持続性を確保するための憲章を作成するよう提案すること。また、完成した「国連水憲章」(仮称)を採択するよう自国の政府に対して働きかけること。



橋本龍太郎GLOBE Japan会長より
(第18回GLOBE 世界総会にあたり)

 この度の第18回GLOBE世界総会並びに第9回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP9)に私自身が出席をする事が出来ないことを非常に残念に思っております。
 一昨年の9・11アメリカ同時多発テロ以降世界はめまぐるしく変動してまいりました。このテロは68カ国の無実かつ非武装の一般市民を攻撃した非道な行為であり、国際社会が一致団結してテロと闘う姿勢を持たなくてはなりません。日本といたしましてもイラクに安定した民主政権を作るために、米英はじめ国際社会と協力し取り組んでいかなければならないと考えております。私は首相外交最高顧問を務めている関係上、急遽総理のイラク問題特使としてイギリス・フランス・ドイツを訪問することになりました。事前準備の為イタリア・ミラノに出向く事が出来ない事を改めてお詫び申し上げます。

 また2003年、日本で行われました第3回世界水フォーラムにおきましては、各国の国賓級、閣僚級合わせ約160名の御臨席を賜り、会期中に米英軍によるイラク攻撃開始に伴う緊迫した情勢の中24000を越す参加者と351にのぼる水に関する会議を行う事が出来ました。
 GLOBE International・GLOBE Japanの共同主催による分科会「水と国会議員」も有効かつ建設的な話し合いが出来、最終的には「水宣言」を取りまとめました。会議中にはジェームス・グリーンウッド(James Greenwood)GLOBE International会長(ウイリアム・シングルトン(William Singleton)GLOBE USA事務局長代読)より素晴らしいお言葉のご挨拶も頂きました。その中にも述べられておりましたが私たち各国国会議員は、水資源の不足を解決するための山積された問題に対処するための鍵を、その手の中に託されています。我々立法者の立場から何が出来るのか?何が必要なのかを見極めながら進んでいかなくてはなりません。「水と国会議員」に参加された海外議員の方々には、2004年1月23日、日本で行われますGLOBE Japanシンポジュウムにおきましてこの会議に参加したことが自国へどの様な影響を及ぼし、それが今どの様に動き出しているのかを取りまとめていただき報告をする予定にしております。アジアで初めて行われましたこのフォーラムではイラク攻撃に伴うイラク難民及び国内避難民に対し、安全で衛生的な水の供給等の問題に触れることができ、その結果ヨハネブルクサミットから第3回世界水フォーラムそしてG8エビアンサミットへと道筋を付ける事が出来ました。「安全な水の供給」に対し共通認識を持つことが出来ましたことは、フォーラム運営委員会会長といたしましても非常に有意義な会議であったと考えております。詳細につきましては後程お配りさせて頂きます最終報告書を御覧下さい。


 COP9につきましては、ホスト国のイタリア、マッテオリ環境大臣が「京都議定書が発効して初めての会合と銘打ちたかった」と発言されたと聞いております。COP3でホスト国を勤めた当時の首相といたしましてはGLOBE インターナショナル世界総会出席の各国国会議員の皆様が一致団結し一刻も早い議定書の批准のためにお国の皆様へ今一度、働きかけをお願いしたい。フランスの酷暑、米国カリフォルニア州での山火事等、世界各国で異常気象に伴う災害が起こる中で更なる温暖化を防ぐ為にも是非とも京都議定書発行を願いつつ、ご挨拶とさせていただきます。ご清聴、有難うございました。